新潮文庫
(〇=現行本 ×=絶版本)

〇縦走路
昭和33年「新潮」に連載された山岳恋愛小説。2人の山男が、夏の北アルプスで美貌アルピニスト”千穂”に出会う。彼女の旧友でライバル美根子を交えた4人の恋の行方を描いた作品。戦後高度成長期の匂いがぷんぷんして好きです。

〇強力伝・孤島
強力伝: 50貫もの風景指示盤を背負って白馬岳山頂に挑む山男を描いた処女作で、第34回直木賞受賞作品。
八甲田山: 氏はこの作品を短編にしたことに満足できず、後に「八甲田山死の彷徨」という名作が生まれることになる。小説家魂を感じます。
凍傷: 富士山頂観測所設立に成功する佐藤技師を中心に描く作品。
おとし穴: おとし穴におちた人間と山犬の攻防。これは見事、傑作です。
山犬物語: 氏が少年時代、祖父から聞いたニホンオオカミの話をまとめたもの。
孤島: 鳥島の測候所員たちの生活を描く。当時絶滅寸前だったアホウドリ(特別天然記念物)が出てくるのですが、2002年秋現在も無事に島に戻り繁殖行動が確認されてます。

〇孤高の人(上)(下)
単独行の加藤文太郎を描いた山岳小説屈指の力作。山屋の人はたいてい読んでますよね。

〇蒼氷・神々の岸壁
蒼氷: 若い気象観測所員たちの友情と死を描く。
疲労凍死: 山での殺人は起こりえるのか!?八ヶ岳を舞台にしたできごと。
怪獣: すごいタイトル(笑)涸沢を舞台にした不思議なできごと。
神々の岩壁: 天才クライマーが谷川岳衝立岩を征服するまでの闘志と半生。

×チンネの裁き・消えたシュプール
剣岳の肩にそびえる岩峰チンネ、その直下に起こった落石遭難に不審を抱く山男たち---長編「チンネの裁き」などユニークな山岳推理小説集。


(〇=現行本 ×=絶版本)
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×岩壁の掟・偽りの快晴
長編1つ短編5つの悲劇的な現実がリアルに描かれた作品集。
岩壁の掟: 人生の重い悲しみを背負った田浦敏夫の生涯を描いた作品。
偽りの快晴: 台風接近中はいかなる理由があっても山に登ってはいけないことを教えてくれる。
薬師岳遭難: 山での競争は無意味。
クレパス: 悲しい物語…
翳りの山: 戦前戦後の谷川岳のようすがわかります。
岩壁の九十九時間: ちょっとオカルトチック。

×火の鳥
火山爆発の危機にさらされた鳥島---死の恐怖と台風観測の使命の間で苛立つ所員たちの緊迫した心理と行動を描く長編。他に2短編。

〇栄光の岩壁(上)(下)
冬の八ヶ岳縦走で遭難し、両足のほとんどを凍傷により失うも、不屈の闘魂により日本一のクライマーになっていく、竹井岳彦(モデル・芳野満彦氏)を描いた作品。上高地・徳沢園のようすがよくわかります。

×望郷
終戦後、ソ連の捕虜となり、その後中国で職を得、心の荒廃した人々の中で誠実に生き抜いた著書の自伝的表題長編など戦争文学6編。

〇先導者・赤い雪崩
女性4人と男性リーダーのパーティが遭難死に至る経緯をとらえ、極限状態における女性の心理を描いた「先導者」など8編を収める。ぼくは「嘆きの氷河」「まぼろしの雷鳥」が好きです。


(○=現行本 ×=絶版本)
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×風雪の北鎌尾根・雷鳴
昭和31年から46年まで時代順にまとめた山岳短編集。
吉田の馬六: 富士山強力の話。山本周五郎テイストが感じられておもしろい。
霧の中: ラブストーリー。
寒冷前線: 見栄から遭難を起こしてしまう話。
三つの遭難碑: 遭難が与える影響とはいかなるものか教えられる。人間の醜い部分がよく描かれてます。
古城: 昭和36年、アルプス旅行のときに拾った話を題材にした作品。ミステリー風。
雷鳴: 格好をつけたがる男の話といいましょうか…。自分にも思い当たるふしがあるので目の痛くなる作品でした…
黒い雪の夢: 子を思う母親の苦悩を描く。
風雪の北鎌尾根: 松濤明「風雪のビバーク」を小説化した作品。山度100%
モルゲンロート: ラブストーリー。
雨の北穂小屋: 北穂小屋でのとある出来事。
牧草地の初雪: 昭和41年、アルプス旅行をもとにした作品。
チロルのコケモモ: 「牧草地の初雪」と同じくアルプス旅行をもとにした作品。
風が死んだ山: 山の怪談を追求する推理小説風な作品。

〇八甲田山死の彷徨
全行程を踏破した弘前三十一聯隊と、199名の死者を出した青森五聯隊---日露戦争前夜、厳冬の八甲田山山中での自然と人間の闘い。「Death March on Mount Hakkoda」というタイトルで英訳されている。

〇アイガー北壁・気象遭難
1800メートルの巨大な垂直の壁に挑んだ二人の日本人登山家を実名小説として描く「アイガー北壁」をはじめ、山岳短編14編を収録。「凍った霧の夜に」が好きです。

〇アルプスの谷・アルプスの村
チューリッヒを出発した汽車は、いよいよ憧れのアイガー、マッターホルンへ……ヨーロッパの自然の美しさを爽やかに綴る紀行文。

〇銀嶺の人(上)(下)
ご存知、登山家で医学博士の今井通子さんをモデルにした作品。『人はなぜ山に登るのか?』と作者が問う「孤高の人」「栄光の岩壁」に続く三部作のラスト作品。仕事を持ちながら岩壁登攀に青春を賭け、女性では世界で初めてマッターホルン北壁完登を成しとげた二人の実在人物をモデルに描く。ヨーロッパアルプスの光景が目に浮かびます。そして、なんともいえない読後感。読んで損はないと思います!


(〇=現行本 ×=絶版本)
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×梅雨将軍信長
土砂降りの桶狭間で今川義元を破り、梅雨の合い間に武田勝頼を倒した信長の秘密を明かす表題作など、科学者が登場する異色小説集。

×氷原・非情のブリザード
木造帆船で南緯八十度を越えた白瀬隊長の英雄物語「氷原」、昭和基地遭難の悲劇「非情のブリザード」など、自然に挑む人間像9編。

〇アラスカ物語
15歳で日本を脱出、アラスカにわたり、エスキモー(イヌイット)の女性と結婚。飢餓から一族を救出して救世主と仰がれたフランク安田の生涯。Jiro Nitta「Alaskan Tale」として英訳されている。

×新田義貞(上)(下)
源氏再興の夢をかけ、鎌倉幕府を倒した新田義貞。南北朝の戦乱期、足利尊氏、楠正成の陰に埋もれた悲運の武将の生涯を活写する。

〇珊瑚
これは夢中になって読んだ長編海洋小説です。
華やかな珊瑚景気にわく五島列島福江島。三人の男と一人の美少女はまにかけたそれぞれの愛を通して、海に生き、死んだ男たちへの哀悼と肉親を失った女たちへの慰安をこめて描きあげた長編ロマン。


×六合目の仇討
江戸後期、西神田を出発した富士詣でも先達をつとめる町人・八兵衛には、幼な馴染みのぬいをめぐる苦渋の過去があった……十年前に武士を捨てた男への復讐劇が、富士山中腹に展開される表題作など、歴史に材をとり、そこに生きた人々の姿を見据える12編。

×からかご大名
三島宿のはずれで大名行列の供先を横切ったために、六歳の少女が斬られた。名主、和尚の助命嘆願の甲斐もなく……。一つの事件が引き起こす波紋を追い、人間関係の複雑さに光をあてた表題作。ほか「駒ケ岳開山」など、様々な時代、階層の人間の生に視点を据え、その本質を衝く10編。


(〇=現行本 ×=絶版本)
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文春文庫

〇富士山頂
NHKプロジェクトX「巨大台風から日本を守れ」(第1期・第1回目)に取り上げられた、富士山レーダー観測塔が建設される過程を作者の体験のもとにまとめた作品。読んでると「地上の星」が頭の中をぐるぐる回ること間違いなしです(笑)

〇武田信玄(全4巻)
NHKの大河ドラマの原作になったことで有名。甲斐の虎といわれ武田信玄の生涯を、初陣から西上の途中、病死するまで描く。

〇芙蓉の人
気象観測所を作るため、命をかけて厳冬の富士山頂にこもる野中到と、夫への愛情から後を追い山頂に登る千代子の感動的な物語。何度も富士山観測所に勤務した氏なので、自然描写は超リアル。中盤から本を閉じることができなくなりました。

×永遠のためいき
昭和35年のラブストーリー。晩秋の八ヶ岳と厳冬の蓼科山を舞台に、二組の男女の恋愛感情を描く。当時の日本の事情と、いまは行こうと思えば一日で帰ってこれる赤岳山頂へも、当時は二泊必要だったんだなぁ、など、当時の様子が伺えます。ラストはだいたい推測ついたのですが、なかなかよかったです。

〇三つの嶺
最初の3〜50ページで、読者を物語に引き込む手腕はさすが。一気に読めます。双子の兄弟と、妹として共に育つ美しいイタリア人女性の純愛兄弟ストーリー。心が浄化されます(笑)。山はドライチンネや槍・穂高くらいでほとんど出てこないのですが、昭和後期の風潮がよく伝わってきます。

×岩の顔
谷川岳の幕岩は泣いているような表情をしている。その岩壁に二人の女性をめぐって三人の男が挑んだ。岩は彼らにどんな表情をみせるのか……。山が怒り、泣き、笑う時、人間たちはどう反応し、どう行動するかを巧みに描きわけた傑作短篇集。表題作ほか「風が死んだ山」「新婚山行」「しごき」「黒い雪洞」「虻と神様」

〇槍ヶ岳開山
笠ヶ岳を再興し、槍ヶ岳を開山した播隆上人の生きざまを描いた作品。この本を読んでから新穂高に行くとまた趣きが変わると思います。上宝村・槍沢ロッヂ・槍ヶ岳山荘では毎年播隆祭が行われています。ちなみに絶版本ですが、新潮文庫「からかご大名」の中に「駒ケ岳開山」(甲斐駒)という短編もあります。

×冬山の掟
孤高の人や栄光の岩壁が生まれる前、おもに初期の山岳小説を集めた短編集。こんな嫌なタイプの人間、ほんとにいるのかな!?と若干オーバーな人物表現が見られるが、さくさく読める。
地獄への滑降: 男の嫉妬を描く。
霧の中で灯が揺れた: 「先導者」を思わせる作品。
遭難者: 見栄から遭難を起こしてしまう話。
冬山の掟: 「冬山では午後になって新しい行動を起こしてはならない」というルールを守らなかったパーティの話。
遺書: 超短編。冬の八ヶ岳での出来事。
おかしな遭難: 志賀高原スキーツアー中の出来事。
霧迷い: 冬の富士山で霧に迷った男の心理を描く。
蔵王越え: 1人の女性を巡る男2人の確執。
愛鷹山: 愛し合う二人が愛鷹山縦走を試みる。
雪崩: 好短編です。

×雪の炎
山岳ミステリーの長編。男女5人で谷川岳を縦走中、リーダー華村敏夫だけが疲労凍死してしまった。兄の死に疑問を感じた美しい妹・名菜枝は、本当に事故死だったのか、あるいは他殺なのかを解明するために奔走する。謎の外国人や産業スパイ、名菜枝の恋心を絡ませながらストーリーは展開していく。昭和44年「女性自身」に連載され、それを新たに書き下ろした作品。「疲労凍死」の長編みたいな感じがしたが、おもしろくて一気に読める。

×武田三代
天下に名をとどろかせた甲斐の武田家。風林火山を旗印にしたこの強大な騎馬軍団は如何にして生まれ滅んだのか。作者の代表作「武田信玄」の基礎をなしたともいえる7短編集。

×小笠原始末記
徳川太平の世にあって、無類の徒と化した浪人・旗本奴・町奴の群。ある者は幕府に反抗し、ある者は喧嘩に生命を賭けた---ご存知幡随院長兵衛、水野十郎左衛門、大岡越前守、さらには九代将軍家重、佐久間象山といった歴史上の人物の実像に迫り、また英国公使館襲撃事件の真相などを描いた傑作時代小説九篇を収録。

〇陽炎(かげろう)
佳品8編を収めた時代小説短編集。


(〇=現行本 ×=絶版本)
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講談社文庫

×聖職の碑
大正2年8月26日に起きた「伊那駒ケ岳遭難」。惨劇の真相を、渾身の取材を通して書き下ろした長編。これを読んで、木曽駒を「聖職の碑コース」から登りたくなりました。

×風の遺産
氏の山岳小説の中では、わたしのもっとも好きな作品。偶然がもたらした伊村と容子の接近。二人は共通の趣味、登山を通して深く関わりあっていった。乾徳山・鷹取山・丹沢……しかし、容子は人妻だった。そこに悲劇の芽は孕まれていた、、、読後感がなんともすがすがしく、さわやかな恋愛小説。昭和文学なので、男女差別的な部分が若干ありますが、容子が主人公なので、女性の方にお勧めしたい作品です。

×鷲ヶ峰物語
鷲ヶ峰物語: 大自然への愛と怖れを喪失した現代人の魂の危機を描く力作。
谷川岳春色: 主人公モテモテでうらやましい。
万治の石仏: 諏訪湖の歴史の一コマを描き、ノスタルジック漂う作品。
『妙法寺記』原本の行方: 氏の優しさを垣間見ることができる作品。
大地震の生霊: 地震(自然)に怯える人間のさまを描く。

×密航船水安丸
無償の情熱に生きた開拓者アメリカ及甚の劇的生涯!待つのは栄光か悲惨か?---明治39年、及川甚三郎が率いる82人の密航者は、宮城県の荻浜港から帆船で新天地カナダへ向かった……。日本人の理想郷を作るため、あらゆる困難を乗りこえ、勇気と行動力とでその夢の実現に生涯を賭けた男及甚を描く長編力作。

×風の中の瞳
少年少女向け作品なのですが、どちらかというと思春期を迎えた子を抱える親御さんが読むとよい作品ではないでしょうか。受験を控える生徒たちと先生のハートフルストーリー。新田氏の子を思う優しさに泣けます。(昭和32年、原題「季節風」として中学三年コースに連載)


(〇=現行本 ×=絶版本)
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中公文庫

×海流
台風のため沈没した貨物船紅洋丸の通信長豊野道彦は、恋する人の写真とともに石垣島の東方海上を漂流する。だが、彼を救助したのは帰国への道を厳として拒否する非常な密輸船だった。激しく渦まく人生の<海流>と闘う男女を描く新田文学の力篇。



光文社文庫

×小説に書かなかった話
「続・白い花が好きだ」を改題して文庫化したもの。武田信玄のことや、氏の子ども時代の出来事が赤裸々に記されていて趣きが深い。これを読んでると、氏とほぼ同世代のうちのじいちゃんがダブってしまい、よこしまな読み方ですが、とても親近感がわきました。



単行本(ハードカバー)

郷愁の八ヶ岳(小学館)
1997年に刊行された山のエッセイ集。氏の八ヶ岳に対する想いや、富士山頂観測所に勤務していたころの話、ヨーロッパアルプス紀行のことなど、氏の人柄を感じることのできる作品。

凍った霧の夜に(毎日新聞社)
当時の現代小説を8つ集めた短編集。
凍った霧の夜に: 霧ヶ峰スキー場で遭難した男の話。
地獄への滑降: 男の嫉妬を描く。
終章の詩人: 立山スキーでの出来事。
天国案内人: 自殺希望の女性とタクシー運転手を描く。雌阿寒岳が出てきます。
ネオンが消える: SFっぽい。
呪われた墓地: 墓地の巡視員を描く。
あなたはなんなのよ: タイトルに惹かれました。
彼岸花: ミステリー小説。おもしろかったです。


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